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谷戸、里山は今や貴重な存在と成っていますが、そもそも多摩の原風景と言えば当にそれでした。 このブログではそんな多摩の原風景をご紹介し、未来にこの素晴らしい風景を伝える一助と成ればと思って開設しました。 また記録の意味も含めて、宅地化されて失われてしまった谷戸や、人工の谷戸や里山も紹介します。
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名称:池田谷戸
住所:東京都町田市下小山田町字池田
所属:多摩丘陵、善治ヶ谷戸支谷
河川:不明(池田川か?)
水系:鶴見川水系、善治ヶ谷川支流
鎮守:小山田神社

自然度:3/5 景観:3/5 危険度:4/5
宅地化:2/5 荒地:4/5 農地:1/5
水田:放棄 耕地:放棄 公園化:特になし

消失危険度:3/5

善治ヶ谷戸の支谷という事になるだろう当地は初め名前が分からなかった。
明らかに支谷然としていたので、きっと何かしらの名前があるだろうとは思っていたが、
手持ち資料にそれらしきものが確認出来ずにいた。
最近細かい字名まで記した地図を見ることが出来るようになったので、
早速調べてみると、字名は「池田」とある。
古い明治期の各村縮図を入手出来たのでこれも確認すると
やはり変わらず「池田」の名がある。
上流の字山中の谷戸を山中谷戸と言うことに習って、
この谷戸の名前をここから池田谷戸としてみたのだが、
もし間違いや、指摘等があれば是非お寄せ頂きたい。

この谷戸は小規模な支谷ではあるものの、その中に一つの集落を形成しており、
集落の合間に耕作放棄状態の耕地がある。
背後の西山中谷戸との間の尾根までは結構な斜度があるので、
当地はかなり急峻な上り坂になっており、
耕作放棄前は傾斜の強い棚田であったのだろうと想像出来る。

当地を上っていく道は谷頭部から先はあまり使われなくなっている模様で、
急激に道が荒れてくる。
その道は尾根に続き、馬頭観音文字塔がひっそりと佇む尾根道合流部に出て
西山中谷戸への道を分けながら山中谷戸方面へ進める。
しかし西山中谷戸は非常に荒廃が進んでいるし、
地元の方もあまり使わない上に、踏み跡状の分岐も多く、

充分な準備がなかったり、里山歩きになれていない場合は危険なので、
先に進まないことをお勧めする。

この辺りの昔の地形図は以下のリンクから

http://habs.dc.affrc.go.jp/habs_map.html?zoom=17&lat=35.60367&lon=139.40624&layers=B0F0FTTTTF

この辺りの地図は以下

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7f2107da.jpg
名称:山中谷戸
住所:東京都町田市下小山田町字山中、同上小山田町
所属:多摩丘陵、善治ヶ谷戸支谷
河川:山中川
水系:鶴見川水系、善治ヶ谷川支流
鎮守:小山田神社

自然度:5/5 景観:4/5 危険度:4/5
宅地化:1/5 荒地:2/5 農地:4/5
水田:あり 耕地:あり 公園化:特になし

消失危険度:0/5

善治ヶ谷戸の最上流部に位置する地域で下小山田町に属するが、
一部は上小山田町に入り込んでいる。
谷の先は尾根幹線になっており、当地と尾根幹線との間にある構造物が、
のどかな風景の向こう側に顔を出していて、実に不思議な景観を生んでいる。
隣接の多摩市唐木田は旧落合村に属する地域で、昔から区界の変化が激しい地でも
あったようだが、ニュータウン開発の折にもこの辺りは市境の変更問題などもあったらしい。
尾根に近い場所であり、その尾根の反対側、すなわち旧落合村唐木田付近が
非常に山深い場所であったのと同じように、この地も谷戸の多い地区の中でも
とりわけ深い場所にあり、山中の地名がついたものだろう。

d44e9aad.jpgこの地区の良さはなんと言っても谷戸田の風景と蔵のある旧家の佇まいだが、
畦で遊ぶ子供達の姿は、自分の幼い頃を思い出し、ちょっとしたタイムスリップを味わえる。
植生豊か、昆虫も多く四季折々の姿が楽しめる素晴らしい地域だ。
しかしそれだけに、マムシやハチなども多く、
今や都会的になった唐木田からすぐの場所だからと余りに軽い気持ちで
訪れるのは軽はずみすぎるかも知れない。
また、一歩入れば複雑な尾根道があり、一部は完全に荒れ地と化した場所へ進み、
気がついたときには道が消失していると言ったことも普通にある場所である。
訪れる前にしっかりと準備をして、雑木の中の地元道には無闇に入らず、
また地元の方に伺ったりしながらゆっくりと散策をするのがよい。

この辺りの昔の地形図は以下のリンクから

http://habs.dc.affrc.go.jp/habs_map.html?zoom=17&lat=35.60656&lon=139.4058&layers=B0F0FTTTTF

この辺りの地図は以下

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名称:善治ヶ谷戸、善次ヶ谷戸
住所:東京都町田市下小山田町字善治ヶ谷
所属:多摩丘陵
河川:善治ヶ谷川
水系:鶴見川水系
鎮守:小山田神社

自然度:3/5 景観:3/5 危険度:2/5
宅地化:2/5 荒地:2/5 農地:3/5
水田:あり 耕地:あり 公園化:特になし

消失危険度:3/5

町田市下小山田町を南北に貫く大きな谷戸の一つである当地は、
かつてこの辺りを治めていた小山田家の家人に「善次」という人がいて、
その人が住んでいた土地と言うことから「善次谷」と呼ばれるようになり、
「善次ヶ谷戸」「善治ヶ谷戸」として地名になっていったようだ。
小山田地区は多摩の原風景を最も色濃くとどめており、
各種の谷戸に関係する調査や里山ランキングなどでも常に上位に入る
有名な地域であるが、この善治ヶ谷戸は中央に幹線が走っていることから、
交通の要衝となり、宅地開発、道の拡幅工事が行われ、
谷戸の景観は変わりつつある。
とはいえ善治ヶ谷戸には支谷が多くあり、山中谷戸や西山中谷戸など、
名のある谷戸も多く、全体で見れば景観や自然の度合いは高い地区であるといえるだろう。

当地は多摩市と隣接しており、尾根幹線の走る場所を大体の境に
多摩市側はニュータウン地区の唐木田となる。
唐木田の小田急電鉄車庫の先にある大妻女子大の脇の道を進み、
そのまま坂を下って行き、小山田会館の前辺りに出る道自体が、
善治ヶ谷戸と考えて差し支えないだろう。


この辺りの昔の地形図は以下のリンクから
http://habs.dc.affrc.go.jp/habs_map.html?zoom=16&lat=35.60404&lon=139.40672&layers=B0F0FTTTTF

この辺りの地図は以下

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名称:宮田西沢
住所:東京都あきる野市横沢
所属:五日市丘陵、横沢入丘陵、横沢入支谷
河川:ヨコ(横沢)支流
水系:多摩川水系、秋川支流、ヨコ(横沢)支流
鎮守:愛宕神社

自然度:5/5 景観:3/5 危険度:5/5
宅地化:0/5 荒地:4/5 農地:1/5
水田:無し 耕地:無し 公園化:ほぼ全域が里山保全地区

消失危険度:0/5

 横沢入の支谷の一つで同じ分岐から二つに枝分かれする谷戸の西側である。
その一帯を「宮田」と呼んでいたことから西側を「西沢」東側を「東沢」としたのだろう。
 この谷戸は奥へと続く道がしっかりしており探索に入る難易度も荒田ノ入などよりは
低く、中央湿地帯だけで飽き足らない向きには良いコースとなるだろう。
 下流部にはため池が設けられており、多くの昆虫や鳥類の水場となっている。
池ノ中に枯れ草があることから、荒れ地をせき止めて水を集めた造りだろうと
想像出来る。
 ちなみにここはかつては農地より石切場としての用途が中心であったようだ。
この地域では「伊奈石」という石材が産物となっており、その石を切り出した石切場が
この谷戸の奥に残っているそうだ。
今回の探訪では藪がきつい上に装備が軽かったのでそこまでは入らなかったが、
いずれ石切場をみてみたいと思う。

このあたりの地図は

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名称:荒田ノ入
住所:東京都あきる野市横沢
所属:五日市丘陵、横沢入丘陵、横沢入支谷
河川:ヨコ(横沢)支流
水系:多摩川水系、秋川支流、ヨコ(横沢)支流
鎮守:愛宕神社

自然度:5/5 景観:2/5 危険度:5/5
宅地化:0/5 荒地:5/5 農地:0/5
水田:無し 耕地:無し 公園化:ほぼ全域が里山保全地区

消失危険度:0/5

 横沢入の支谷の一つで、中央湿地帯最奥部の分岐にあたる。
この辺りから中央の路(林道小机・横沢線)は山道の様相を濃くして
山中をダートで走って行くが、この谷戸は山中の急峻な峰に挟まれた
非常に細く小さい支谷になっている。
 かつては水田が奥まであったというが、名前からしても往事から既に
荒れ地が多い場所であっただろう。
 このあたりは非常に水に恵まれており、湧水の途絶えることはないし
路も掘ればすぐ水がしみ出してくるような場所だが、この谷戸から本線への
水路は見当たらないことから、浸食時代はさておいたとしても、
農耕時代にはそれほど開墾されていなかったのではないかと想像される。
 現在は湿地の色合い濃い完全な荒れ地となっており、奥に入るのは
かなりの危険があるだろう。もちろん充分な装備と経験が必要なので、
軽々に踏み込むことは避けたいし、当然ながら夏の時期より冬の方が
足場の目視は良いだろう。
 横沢入では保全地区に指定されていない支谷でも路と足場の草刈りは
綺麗に行われている場所が多いが、この荒田ノ入はそれも行われていないから、
どこまでも荒れ地で踏み込むものも少ないのだろう。

 ちなみに「荒田ノ入」と言う名前は色々な場所に散見される。
同じ名前は八王子の東中野の谷津入にもあるし、かつての小字や小名を調べると
農耕地域には「荒田」とか「あら田」という名前が良く登場する。
 wikipediaによると「荒田」は「こうでん」と読み、耕作放棄地を指す語らしいので、
そういった由来が次第に土地の名前へと変化していったのだろう。

wikipediaによる「荒田」の項目
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%92%E7%94%B0

この辺りの地図

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名称:横沢入、中央湿地帯
住所:東京都あきる野市横沢
所属:五日市丘陵、横沢入丘陵、横沢入本谷
河川:ヨコ(横沢)
水系:多摩川水系、秋川支流
鎮守:愛宕神社

自然度:5/5 景観:5/5 危険度:4/5
宅地化:0/5 荒地:3/5 農地:3/5
水田:有り 耕地:有り 公園化:ほぼ全域が里山保全地区

消失危険度:0/5

 平成12年に東京都環境局が行った「多摩地域の谷戸の保全に関する調査」で
自然の豊富さ等の項目によってランク分けされた都下の谷戸地で、
5つしか選ばれなかったAランクの一つがこの横沢入である。
 かっては棚田(傾斜角から正確には棚田とは言えないらしいが)が広がり、
炭焼き小屋や畦が縦横に走る多摩の原風景そのものであったそうだが、
次第に離農が広がり荒れ地と化して行く土地の再利用の観点から、
旧五日市町(現あきる野市)主導で大規模な宅地開発が計画され、
大部分をJR東日本が取得し1000戸に上る造成を行う計画が進行したが、
住民やNPOの熱心な勝が実り、この計画は撤回され、
その後は東京都の里山保全地区第一号としてNPO法人「タンボの会」を
中心に守られることとなった。
 さすがにAランクの谷戸だけあって、その景観と自然の豊富さは
感嘆するほか無いといえる。
多数のトンボをはじめとする昆虫類、オオルリやオオタカといった鳥類、
トウキョウサンショウウオ等の水生動物や植物とこの地域に東京都の自然の
大半が凝縮しているのではないかとすら思うほどだ。

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 JR五日市線の武蔵増戸駅から五日市街道沿いに武蔵五日市駅方面へ
しばらく歩き、「新秋川橋東」信号から旧道へ逸れ、
伊奈地区の鎮守「正一位岩走神社」を過ぎた辺りに細い路が分岐する。
ここが横沢入への入り口である。
分かりづらい場所だが、良く見ると路の分岐には古い道しるべと
案内板がそっと立っている。
 ここから先は隘路なので、もし来るまで来られるなら大悲願寺の
駐車場などに停めさせて頂くなどした方がよいだろう。
また、横沢入の管理拠点にも小さな駐車場があるものの、
基本的には許可を受けたもの以外の駐車は出来ない旨の掲示があるし、
NPO法人でも排気ガスの問題があるとのことで、来るまで来ることは
余りお勧め出来ない。

 管理拠点の立つところから中央の路にそって奥に棚田が広がっている。
しばらく進むと車止めがしてあり「林道小机・横沢線」の看板がある。
ここから天竺山方面に登坂し、小机方面への林道でダート路であることから、
二輪走行を楽しむ人も多く、山中にマシン音が響き渡っている。
ここからは山道で、いわゆる横沢入地区もここまでとも言える。
 なお、入り口付近からこの辺りまでを「中央湿地帯」と呼んでいるようだが、
この中央湿地帯の両岸に多数の支谷が走っている。
各支谷についてはそれぞれの項目に譲ることとしたい。

この辺りの地形図は
http://www.taishin.metro.tokyo.jp/yuso/pdf/09KC964.pdf

この辺りの地図は以下

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名称:柳入
住所:東京都多摩市連光寺3丁目45番地
所属:多摩丘陵、大谷戸支谷
河川:大谷戸川源流部の一つ
水系:多摩川水系、乞田川支流大谷戸川支流
鎮守:春日神社、神明社、若宮八幡宮

自然度:5/5 景観:2/5 危険度:3/5
宅地化:1/5 荒地:4/5 農地:0/5
水田:無し 耕地:無し 公園化:全域

消失危険度:0/5

 桜ヶ丘公園内にあるもと谷戸地区。この辺りは公園整備と近くには現在は公園用地となったが
グランドがあったりで幾分か山を崩して作られた箇所である。
かつてはもっと山が迫っていて、その山麓の小地域であったようだが、現在の林野庁宿舎付近は
昔から集落部をなしていたようだ。
 都立公園化されたため、自然の保護については申し分ないが、人気はないので、
広場以外では雑木と荒れ地が目立つ。どうも見るに付け湿地だったのではないかと思われる場所で、
いまでもそこかしこの地面から水がしみ出していたり、すぐ下のもとグランドだった場所にも
池が整備されていたりするのはそのためではないだろうか。
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 ほぼ中央部に大松山方面への通路が通っており、
雑木の中をとぼとぼ進む道はいつも谷風が心地よい。
場所が場所だけに野鳥も豊富で、散策の人の他に、
超望遠レンズを持ったバーダーともよくすれ違う。
 道沿いにはフェンスがしてあり、中には入れない場所が
隣接しているが、植生保護や植生実験などが行われているようだ。

 ここから大松山への登坂は当時のそれほどではなくなったのかも知れないが、
意外にキツイものがある。
はじめはなだらかな山道だが、最後で一気に崖を登る階段があり、息せき切って登る人を
多く見かける。
登り切ったあたりには眺望の良いポイントが用意されており、遙か向こうの山並みと、
聖蹟桜ヶ丘~日野方面の一望、さらにはすぐ眼下の大谷戸の町並みが眺められる。
こういった場所に多い、山の名前を風景画に記したプレートも用意されており、
冬の空気の澄んだ日には最適だろう。

 ちなみにこの辺りは道沿いに枯れ沢が走っており、かつてはここに水路があったようだが、
現在はかなりの大雨でも降らないとここに水は流れないだろう。
ちなみにそこは桜ヶ丘公園内の「東谷戸」と名付けられているが、
新しく名付けられた場所で、もともとは山だった場所である。
 もとグランドだった部分の湿地からは絶えず水が湧いており、
大谷戸公園方面に向かってどんどん流下していく。
 水系的には大谷戸川に合流後、乞田川に注いで多摩川に流れて行くのだが、
流下方向が一方ではないようで、幾筋かの流れをつくって大谷戸川に落ちている
と考えることが出来る。

 公園散策の折、そんな昔を想像してみるのも悪くない。

この辺りの昔の地形図は以下のリンクから
http://habs.dc.affrc.go.jp/habs_map.html?zoom=16&lat=35.62991&lon=139.46588&layers=B0F0FTTTTF

この辺りの現在の地図は以下

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名称:狸ヶ入
住所:東京都多摩市連光寺3丁目42番地
所属:多摩丘陵、大谷戸支谷
河川:大谷戸川源流部の一つ
水系:多摩川水系、乞田川支流大谷戸川支流
鎮守:春日神社、神明社、若宮八幡宮

自然度:4/5 景観:4/5 危険度:2/5
宅地化:2/5 荒地:1/5 農地:3/5
水田:有り 耕地:有り 公園化:ほぼ全域

消失危険度:復活

 連光寺小学校付近を流下している大谷戸川(現在この付近は暗渠化)はいくつもの源流域があり、
この狸ヶ入付近もその一つである。
そもそもは、狸が出るような場所という意味の小さな地域で、表に通る早馬道から一本入ったあたり、
実際には連光寺小学校の前あたりの名だったが、現在その地域は宅地化により、面影はない。
小学校前の細い道を山側に入ると、古い旧家の並ぶ前の地に急に大きな農地が広がる。
54698ec1.jpg この斜面農地は貸し出し農地で、利用料を払って区画を押さえれば、
誰でも作物が作れるようになっているらしく、
トウモロコシや中には九条ネギを育てている方もおられるようで、
バラエティに富む。
その耕地を左手見ながらやや急峻な坂を登り切ると
目の前に急に棚田が広がって、その景観に思わず声を上げてしまうほどだ。


 都立桜ヶ丘公園が一帯に広がる地域で、狸ヶ入の最奥の場所に当たるこの棚田は、
雑木林ボランティアの手によって復活管理されている棚田だそうで、保護の観点から普段入り口は
しっかりと閉ざされていて中に立ち入ることは出来ないが、外側から景観を楽しむには充分すぎる。
奥のため池に溜められた湧水が水路を伝い棚田に供給され、小さな調整池にあつまり、
流下していく様は当に多摩の原風景そのものだ。
先ほどの耕地横を暗渠で流れ、連光寺小学校裏手で大谷戸公園方面から来た
大谷戸川本線に注いでいる。
 ちなみに谷戸の奥の里山は「榎戸山」という名前で、この尾根を越えた反対側には、
多摩市きっての夜景スポットとして若い人にも人気の「ゆうひの丘」がある。
都立公園として整備されたことがこの景観を維持していることを本当にありがたく思う瞬間だ。
1d92c956.jpg


 復活した棚田と榎戸山の景観以外にも旧家や斜面耕地、
栗の植わった農地など、かつてはどこにでもあった光景がここには残っている。
棚田の目の前を通る道を雑木に向かって進むと、
林野庁多摩宿舎のある地域に入り、連光寺公園として解放されたスペースの横で
植生実験などを行っているのを見ることが出来る。
かつて柳入と呼ばれた地域で、更に先には聖蹟記念館のある大松山へ至る。



 雑木林ボランティアの皆さんのご努力に心から敬服しつつ、地元に住むものとして、
この景観を誇りに思わずにはいられない。

この辺りの昔の地形図は以下のリンク
http://habs.dc.affrc.go.jp/habs_map.html?zoom=16&lat=35.63229&lon=139.46268&layers=B0F0FTTTTF

現在のこの辺りの地図は以下

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773c9525.jpg
 
名称:谷戸
住所:東京都多摩市桜ヶ丘4丁目付近
所属:多摩丘陵、入道谷戸近傍
河川:不明
水系:多摩川水系、大栗川支流雨田川支流
鎮守:山神社

自然度:0/5 景観:0/5 危険度:0/5
宅地化:5/5 荒地:0/5 農地:0/5
水田:無し 耕地:無し 公園化:無し

消失危険度:消失済み

 多摩市の小字や小名の由来と場所を記載した資料によると、現在はすっかり宅地となった
山神社の付近に谷戸があったと書かれている。
特徴のある名前もなくただ「谷戸」と言っていたらしいことからも大規模なものではなく、
ちょっとした小さな谷間と言った場所だったのだろうが、
現在の風景からは殆ど面影を垣間見ることは出来ない。
7e662e31.jpg

 入り口もかつてはきっと獣道のようなものだったのだろうが、
綺麗な区画割りで整備されている現在はしっかりとした
住宅街路となってしまって、想像力をたくましくしても
往事の姿は蘇ってこない。



 ただ一つ、地形にだけ何となく面影が残っている。
もともと高台の地だが、この辺りから緩やかに上って行く地形と、そこに整然と並んだ住宅が
高低差を見るのには好都合な存在になっている。
入道谷戸辺りから俯瞰してみると、たしかに舌状になっている部分があって、
もともとは谷戸だったことをほんのわずかに伝えている。
 多摩には数多くの谷戸が存在したが、また消失した谷戸の数も同じだけ多い。
宅地化と谷戸の消失は密接な地域だが、特に名もない小さな谷戸の痕跡は、
すっかり消されてしまい、住人の記憶からも消えて行くのはなんだか寂しい気もする。

この辺りの昔の地形図は以下のリンク
http://habs.dc.affrc.go.jp/habs_map.html?zoom=16&lat=35.64372&lon=139.43994&layers=B0F0FTTTTF

この辺りの現在の地図は以下

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627d97b1.jpg
 
名称:入道谷戸
住所:東京都多摩市桜ヶ丘4丁目付近
所属:多摩丘陵、入道谷戸本谷
河川:不明
水系:多摩川水系、大栗川支流雨田川支流
鎮守:山神社

自然度:2/5 景観:3/5 危険度:1/5
宅地化:4/5 荒地:1/5 農地:0/5
水田:無し 耕地:無し 公園化:無し

消失危険度:4/5

 入道谷戸とはなんともおどろっぽい名前だが、近くには壽徳寺というお寺があり、
この谷戸はその裏山付近の鬱蒼とした場所だったそうだから、考えてみれば条件が揃って
この名前になったのも至極うなずける。
伝承によると「入道のでるようなうら寂しいところ」だというから、いつの時代も人の恐怖は
変わらないものだと思えてならない。

59a36bb6.jpg
 場所は京王電鉄がニュータウン開発初期に手がけた
桜ヶ丘のただ中にあって、高台の宅地の中に一段低くなった
辺りに存在している。
 入り口は壽徳寺の母屋に繋がる道の辺りだったと思われるが、
現在は立ち入り禁止となっていてここからでは入れない。
せっかくなので、この立派なお寺を参拝しに中に入ると、
本堂の後ろは斜面に墓地が作られており、
この墓地から裏の林に抜ける道がある。
 林の中にはこの寺の代々住職の関係と思われる墓のほか、小さなユンボもあったりして、
どうもこの谷戸の跡地を更に墓地にするような気配が立ち上っており、
景観の消失も近いかも知れない。
 とはいえ、大規模宅地の中に、裏山をしょったお寺と、すぐ隣には静かな雑木をもった
鎮守の山神社もあり、桜ヶ丘の中では自然の色合いの濃い場所なことはかわりはない。
ちなみにこの壽徳寺は「佐伯谷戸」の項目で触れた佐伯道永という役人が、
この地に再建したと伝わるお寺であり、地域の信仰の中心となっていたようだ。

 アクセスは土地勘がないと少々厳しいかも知れないが、京王バスが運行する
多摩市ミニバスのバス停「山神社」があり、永山駅と百草団地を結ぶ路線が通っている。
しかしながら本数は余り多くないので、利用にあたっては事前にしっかり調査されることが望ましい。
c3f74eb0.jpg 壽徳寺への参拝と山神社への参詣の他にも史跡の寺方大屋敷などもあり、
ゆっくりとした休みの日には良い散歩コースになるのではないだろうか。
ただ、この谷戸は寺の敷地内なので、むやみに入るのはやめて、
許可を得た方がよい。
そして、せっかくこの地に来たのなら、壽徳寺からの眺望を楽しまない手はないだろう。
高台に位置する当地らしく眼下に広がる眺望はなかなかのものだ。

 この谷戸の水系は少々複雑であり、乞田川に沿った丘陵地の乞田川とは反対の斜面にあり、
流れ出た水路は、東寺方や和田に落ちて行く。
和田には普通河川の雨田川がほっそり流れているが、どうもこの川の源流の一つが
山神社付近にあるらしいとのことで、恐らくは入道谷戸の流れもこれと一体だと思われる。
雨田川はそのまま和田の原をゆっくりと野猿街道方面に流れ、多摩第二小学校付近を
流下して大栗川に落ちる。
 当時は和田の田圃の重要な水源にもなっていたんだろう。
神社とお寺に鎮守の森と宅地のオアシスのような景観を町の誇りに思わないのもったいない。

この辺りの昔の地形図は以下のリンク
http://habs.dc.affrc.go.jp/habs_map.html?zoom=16&lat=35.63971&lon=139.44185&layers=B0F0FTTTTF

この辺りの現在の地図は以下

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自己紹介:
音楽系の仕事の傍ら、多摩の原風景を求めて
歩き回っています。
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